岡山県瀬戸内市牛窓紺裏の素戔嗚神社秋祭りに、神事として奉納される稚児舞「唐子踊り」がある。「から」とは中国の唐ではない。「金官伽耶」の「伽耶」を指す。「伽耶」は「賀洛(がら)」とも呼ばれた。ヤもラも「国」をあらわす古代韓国語である。
唐子踊りの踊り子たちの額の中央には十字の赤いマークが描かれている。これが何をあらわすものか、長い間その謎が解けなかったが、やっとその謎が解けてホッとしている。十は「十字石」をあらわす。十字形の光をなす赤黒藍色の美しい鉱石、つまり「宝石」がこの十字石なのである。
かつての日本には新生児が初外出するときやお宮参りをする時、鍋墨や紅で「メ」や「大」などの字を額に書く風習があり、これを「あやつこ(綾子)」と呼んでいた。「あや」は二つの線の交差を意味し、あの世からこの世への社会的誕生を表したもので、一種の通過儀礼とみなされてきたという。
天井の低い坑内のどこにウッシ(上等の鉄)があるか探している少年たちの情景が唐子踊りの歌詞や踊りの所作から明らかに浮かび上がる。鉄と共に「十字石」も採掘されるところから「あやつこ」として十の印がこの地方では採用されていたのかもしれない。
韓国ドラマ「帝王の娘スベクヒャン」で、武寧王の娘「守百香(スベクヒャン)」の養父が伽耶から百済に鉄と共に宝石を運ぶシーンがあった。鉄も宝石も高価なものであるから、腕に覚えのある者がいわば警備員として雇われていたようだ。