22 聖武天皇のブレーンだった大伴家持

2020年12月16日 09:37

万葉集6−1029   内舎人大伴家持

歌意
鉄磨ぎの場を掌握しに行こう。濃尾の野の輩を選別し、我々穢たちが、鉄の場を支配しよう。持統天皇の鉄の地をすべて集め、領地と玉座を守りに行こう。

 従来訓は「河口の野辺に仮寝して幾夜にもなると、妹の手枕が懐かしく思われることだ。」とされてきた。藤原広嗣の乱の最中、都を出たのが10月29日。天皇のお供をしての慌ただしい旅がこれから、という時に野望に燃える男に「妻の手枕が恋しい」などという呑気な歌が詠めるだろうか。しかも河口滞在中に、広嗣は捕らえられ、斬殺されている。

 聖武の時代を大きく開く転機がこの10日間に訪れたのである。このような事情をみれば、従来訓の重大な誤訳は一目瞭然。家持は単なる舎人ではなく、聖武の強力なブレーンであったことがわかる。

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